文の空所A,Bに該当する語の組合せとして,最も妥当なのはどれか
いつであったか,私は会社がとても好きだ,と語る人に会ったことがある。ぼく自身は勤めている間中,会社が好きだと思ったことはなかった。おそらく大部分の勤め人は、心のどこかには自分が使われている企業への《 A 》や違和感を抱いているに違いない。それだというのに、あまりに明快に会社が好きだと表明されてこちらは驚いた。この人は愛社精神の塊か企業意識の権化であるかと疑った。そうではなかった。私は人と一緒に働くのが好きなのだと相手はつけ加えた。つまり,一人ではなく多数の人々と共に働くことの出来る会社というところが好きなのだ,と彼は言いたかったのだ。
おそらくは有能な社員であり,恵まれた地位にもいたために彼が一層会社を好きになったのだろうが,人と一緒に働くのが好きだという彼の言葉には, ぼくが《 B 》の残業の折にふと感じたような温かな思いを呼び覚すものがあった
労働の中には,自己表現を求めてひたすらに突き進もうとする垂直の志向と,その過程で同じ営みに身を浸している者同士が触れ合う共感の拡がりと,二つのものが身をない合わせてひそんでいるのだろう。つまり,自己表現を求め,自己実現をはからんとする営為の切実さが共感の環に火をつけるのであり,共感の環の熱さがその営為を保証し,鼓舞しつつ人と人とを結びつけていくのだと考えられる。
(黒井千次「働くということ」より)
A B
1 期待感 共同作業
2 嫌悪感 単独作業
3 嫌惡感 共同作業
4 孤独感 単独作業
5 孤独感 共同作業
正答は下にスクロールすると出てきます
正答 3
働くいうことは、自己表現を求めてひたすらに突き進もうとする者どうしが触れ合うことで、共感が生まれ、その共感が個人を鼓舞する場だという内容。
空所Aを見ると「Aや達和感」とあり、「や」の前後の語は類似した意味の語句が入ることが推測されるので、Aは違和感と同じようなマイナスな表現が入る。よって、「期待感」は不適切となる。「残る選択肢は「孤独感」と「嫌悪感」だが、空欄の前後には「孤独」についての記述はなく、また,孤独は人に対して感じるもので、「企業への孤独感」では不自然なつながりとなる。
Aの前にある記述から、筆者の「会社が好きだと思ったことはなかった」という思いが「大部分の勤め人」にも通じるに違いないと主張されていると解釈できるので、「嫌悪感」が妥当となる。
B.空所Bの前に「人と一緒に働く」、後に「温かな思い」とあることから、「共同作業」が入る。「単独作業」では、一人で作業するので、「温かな思い」を感じることはできない。
したがって、正答は3である。
出典 実務教育出版 「地方初級教養試験過去問350」より
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